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自動車雑誌編集の仕事にも活かされる
ミニカーが育んだ“ピュアな視点”

ヒストリックカーとスポーツカーを愛するすべてのエンスージァストに向けた自動車誌『カーマガジン』の編集長である長尾 循。仕事にも活かされる実車とミニカーの関係やその魅力について、語ってもらいました。


長尾氏インタビュー

「クルマに興味をもち始める時期としてもっとも多いと思われるのは、免許を取得できる年齢に達した時。その時点でクルマに興味をもち始めた人の多くは『馬力』とか『乗り心地』とか『燃費』など、実用性ばかりを追い求めてしまいがちです。たしかに、これらの情報は必要なものであり、誰にも役に立ちます。でも、自分にはそういったクルマの見方は当てはまらないんです。自分で言うのも何ですが、私の場合はどんなクルマだろうと、何かしらの想像力をかき立てることができるピュアな視点でクルマを見ていると自己分析しています。

それはなぜなのかといえば、私が幼い頃からミニカーに触れてきたことが一番の要因だと思っています。私の両親はクルマの免許をもっていませんが、家には自動車雑誌やミニカーがありました。家にクルマがないぶん、他の人よりも憧れがより強かったのかもしれません。仕事柄、いろいろなクルマに試乗しますが、その際も“ミニカーというフィルター”を通してクルマを見ている気がします。例えば、カウンタックとオート三輪では走行性能に雲泥の差がありますよね? でも、私の場合は走行性能にかかわらず、両車を分け隔てなく同じ視点で見ていますし、実車のバスとミニカーのバスも同列なものとして捉えています。幼い頃からミニカーで遊んできた人はクルマに対する見方が自由というか、メーカー的にも社会的にも失敗作といわれるクルマでも“慈悲の心”がもてるというか、“子どもの頃の直感が残っている”というか……(笑)。私の周りにいるミニカー好きの人は、そういう感性をもっている人が多いですね」

カウンタック

このように、ミニカー好きが高じて実車好きになったと語る長尾さん。幼い頃からミニカーに触れていたことで自然に身についた、他人とは異なるクルマに対する感性は現在の自動車雑誌編集という仕事にも活かされているという。

「普段の生活のなかで、ミニカーはなくても困らない。というか、極論すればミニカーはあってもなくてもいいものじゃないですか? でも、そういうものを愛してしまったのは自分ですし、役に立たないからこそ愛おしいんです(笑)。でも、ミニカーを趣味にしたことによって視野が広くなったことは事実ですので、僕にとってミニカーは“なくては困る存在”といっても、決して言い過ぎではありません。

実車とミニカーの違いをわかりやすく例えるなら、実車はどちらかというとペットに近い感覚でしょうか? 1台の愛車を所有し、それを単なる道具以上のものとして末永く付き合っていきますよね。いっぽうのミニカーは実車と違って数多く集めることができますし、さまざまなスケールがあって大きさも違うから、犬がいれば象もいる(笑)。それこそ、動物園に近い感覚です。もっとカッコよく言うなら、博物館のようなものかな。書斎でくつろぎながら、自分のミニカーコレクションを眺めることによって、そのクルマ、そのメーカーの歴史や成り立ちなどを頭のなかで思い描くことができますから。とはいえ……私にとってみれば、ミニカーだろうと実車だろうと、クルマ好きであることに変わりはありませんけどね(笑)」

長尾氏とカウンタック

OUSIAのカウンタックLP400を手にする長尾さん。「このシリーズは開閉機構こそありませんが、プロポーションを追求することでビギナーでも手が出しやすい価格に設定されているのが魅力。そんな入門的なポジションがOUSIAシリーズのよさですよね。でも、年季の入ったユーザーでも飾って楽しめちゃうから不思議(笑)」「ミニカーは“より精密に、よりリアルに”だけがすべてではないと思います。そういう意味では、京商はインポートも含めて数多くのブランドがあって選択肢が広いこともユーザーにとってはうれしいかぎり。“これはこういうシリーズ”というのが明確になっているから、自分好みのものも必ず見つかるんですよね」

セブン実車

写真:田中秀宣

カー・マガジンの編集長として試乗取材の機会も多いと語る長尾さん。「僕にとってクルマは“乗ってどうのこうの”というだけのものではありません。どんなクルマでも、何かしらの想像力がかき立てられるんですよね。そんな視点がもてるようになったのも、ミニカーという趣味をもっていたからに他なりません」

長尾氏

写真:近藤浩之

カーマガジン表紙

■長尾 循
1962年5月14日生まれ。1985年にネコ・パブリッシングに入社し、カー・マガジン・デザイン室を経てミニカー&プラモデル専門誌『モデル・カーズ』の編集長を1997年から2015年まで務める。現在はカー・マガジンの編集長として活躍。所有するミニカーは約1000台を数え、京商製ミニカーのなかでは比較的初期モデルとなる1/43スケールのケーターハム・スーパーセブンとデイトナ・コブラ・クーペがお気に入り。愛車は1986年に入手以来、現在も所有している1981年式ケーターハム・スーパーセブンGTスプリントとルノー・ルーテシア。

■カーマガジン
ヒストリックカーとスポーツカーを愛するすべてのエンスージァストに向けた自動車誌。毎月26日発売。発行:ネコ・パブリッシング