概要
2020年にマツダは創立100周年を迎えたが、その歴史は波乱万丈の連続で何度も経営危機を迎えたのも事実だ。しかし、そんな状況を逆転満塁ホームラン級のモデルが救ってきた。その一台が1980年に登場した5代目ファミリア(BD型)」である。
先代(4代目)からハッチバックボディを受け継いだが、エクステリアは直線基調のクリーンで精悍なスタイリングに大きく刷新。インテリアは機能的かつスポーティなデザインが特長で、フルフラットが可能なフロントシートやリアシートは背もたれと側面の内装が連続する形状の「ラウンジシート」を採用するなど、利便性/快適性も考慮された設計だった。当時ではこのクラスでは珍しかった電動サンルーフも設定されていた。
メカニズムの面ではマツダ車初となる横置きFFレイアウトを採用。エンジンは直列4気筒1.3/1.5Lに加えて、1.5Lターボも追加された。プラットフォームはこのクルマのために新規開発、サスペンションはこのクラスでは贅沢な4輪ストラットを採用するが、リアサスペンションに特長があり、2本のロアアームと長いトレーリングアームを組み合わせ、トーコントロールを行なう機構が盛り込まれていた(SSサスペンション)。
凄く速いわけではないが、スポーティで活動的、そして身の丈に合ったコンセプトが高く評価され発売するやいなや大ヒット。特に電動サンルーフを装着した赤色の「XG」は若者から高い支持を集め、社会現象になったほど。更にドアミラー、シートに被せるTシャツ、パイオニアのオーディオ、アルミホイール、エアロパーツなど、カスタマイズを広める役目も担っていた。
その人気は数字にも表れており、当時の2強と呼ばれたトヨタ・カローラ、日産サニーを抑えて月間販売台数ナンバーワンを何度も獲得している。ちなみに販売開始から27カ月で100万台を達成したが、これは当時の世界最短記録である。
現在はファミリアの名はOEMモデルに残るのみだが、5代目の志はアクセラを経てMAZDA3がしっかりと受け継いでいる。
自動車研究家 山本シンヤ
■ レジンモデル
■ 開閉機構ナシ